建交労西日本鉄道本部書記長 藤本健司
1、年功序列型から成果主義賃金制へ
JR西日本は平成12年度に賃金制度を大きく変更しました。それまでの年功序列型から成果主義賃金制への大きな転換をめざしたのです。具体的にはまだ年功制の部分を多く残しながらも新しい制度への第一歩としての重大な転換点となりました。今後この制度をベースに成果部分を徐々に大きくしていくことが前提となった制度としての地固めが行われました。
そして制度導入からわずか4年で「制度の意義をさらに深度化する」として見直しが提案され、平成18年度からの導入をめざしましたが、福知山線の事故で導入が延期されることになりました。
2、新たな賃金制度の問題点
現在の賃金制度の主な内容は次のとおりです。
@ 賃金を「年齢給」と「仕事給」に分け、「年齢給」は絶対的なものとして44歳をピークに山形を描く。「仕事給」は高卒新入社員時に31770円(平成17年度)とし、その後は毎年の個人の評価や昇級試験の合否によって昇給額が決定される。
毎年の評価や昇級試験の合否には現場長の意見でほぼ決定する。
A 一般職をC5級からC1級の5段階、管理職をL2からL1とM2からM1の4段階とし、Cクラスの最高賃金はLクラスの最低賃金より低く、Lクラスの最高賃金はMクラスの最低賃金より低くなるように設定。
CクラスからLクラスへの試験は現場長推薦がなければ試験すら受けられない。
B 一般職の中で業務内容と賃金を切り離した。
以前は運転士になればいくら、駅の輸送主任になればいくら、などその仕事に就く試験に受かれば賃金が後からついてきたが、「賃金が同じなら責任が重い仕事になんか就きたくない」という風潮が生まれてきた。
3、平成18年度から導入を予定していた変更点
@ 毎年の評価の比率を上げ、最大1600円の差がつくようにする。
A 同一クラス(C5ならC5)に6年以上いれば7年目から昇給は0円になる。昇級試験受験資格が同じクラスに6年以上いること、なので最初の試験に合格しなければその年から昇給はなくなる。
B 同一クラスに9年以上いれば特例的に昇級させる制度を廃止する。
4、建交労のこれまでの取り組み
平成11年度に提案されて以来、私たちはこの制度は労働者間に分断をもたらし、恣意的な評価で労働者のやる気を削ぐことになりかねない、また技術継承を妨げるものである、として反対してきました。独自にビラも作成し、職場や社宅、門前などで配布し撤回を呼びかけました。
団体交渉では会社は「頑張った者に報いるため」と言っていますが、例えば列車の運転士は「決められた時間に発車し、決められた時間に到着する」ものでありどこに評価が入り込む余地があるのか、保守部門などグループで仕事する箇所では個人単位の把握など出来ない、など矛盾点を追求してきましたが、JR連合西労組と国労が協定化するなかで、当組合員には就業規則化して取り扱う、として実施が強行されました。
5、置き去りにされた安全
賃金は労働条件の最たるものです。しかし同時に労働者が生活していく上で必要欠かせざるものでもあります。それを企業の一方的評価によって賃金を決定するとなれば企業への隷属化が進むことは当然です。JR西日本でも制度導入後、職場で様々な問題を引き起こしています。
その第1は、社員に会社方針への服従を迫ることです。方針が正しいかどうかではなく服従するかどうかが問われ、「自分で考えることは悪」という風潮になっていきました。
第2にサービス残業です。会社は「自主的なもの」といいますが、「職場活性化委員会」等の名前でビラ配りや駅の掃除などに参加させ、評価の対象としています。
第3に増収活動です。勤務時間内の通常の仕事で行ったものは成績外で、勤務時間外にとってきたものが成績として加算され、年間50〜60万円の目標に対する達成度が評価されます。出来ない者は自腹を切ってでもやらざるを得なくなっています。
福知山線での脱線事故で明らかになった事故当日の様々な「不適切な事象」、ボーリング大会、ゴルフ、宴会、などなど。特別、事故の日がこういうことが多かったのではありません。毎日こういうことがどこかでやられているということです。そしてほとんどが増収活動の一環であり、現場長が企画して行っているものです。これを断るためには「相当な勇気」が必要となっています。
こうした制度による職場の状況は、安全面をも浸食しています。設備面やソフト面など社員からの申告は全く聞き入れられず、逆に「上司への暴言」としてマイナス評価の対象となっている場合もありました。このことにより逆に会社は「直すべき不安全箇所」に無知となり今回の事故につなげてしまったのです。
JR西日本が導入してから4年、他のJR会社は追随していません。評価主義賃金制度が持つ危険性を認知してかどうかわかりませんが、導入しない方が賢明でしょう。制度を導入し会社への帰属意識を高めたにも係わらず福知山線の事故は起きました。制度は労働者にとって単に肩の重みが増しただけに過ぎません。私達は今後も制度の撤廃めざして頑張ります。