不法行為を如実に示す葛西敬之職員局次長の発言
「全動労不当労働行為責任追及訴訟」判決から(2008.1.23
東京地裁民事11部)
国鉄による不法行為について、東京地裁判決は当時の葛西国鉄職員局次長(現・JR東海会長)の発言が、国鉄の中立保持義務違反を「如実に示すもの」とし、組合員が有する「公平な取扱を受けるべき法的利益を違法に侵害するものと言うべきである」と、国鉄の不当労働行為を断罪しました。以下、このことを指摘した判決文の抜粋を紹介いたします。
葛西氏は東京高裁で争われている鉄建公団訴訟の裁判で、組合差別を行った中心人物として、2008年6月2日に証人尋問されることが決まっています。
(4)国鉄当局の意識・態度に関する事情等
ア 国鉄職員局次長葛西敬之(以下「葛西職員局次長」という。)は,昭和61年5月21日,動労東京地方本部の会議に招かれた際のあいさつで,国鉄改革に触れて,「・・・私はこれから,山崎(注・国労の山崎元委員長)の腹をブンなぐってやろうと思っています。みんなを不幸にし,道連れにされないようにやっていかなければならないと思うんでありますが,不当労働行為をやれば法律で禁止されていますので,私は不当労働行為をやらないということで,つまり,やらないということは,うまくやるということでありまして・・・」などと述べた。(甲68,69)
また,昭和61年11月30日付けの「公企労レポート」(甲48)には,国鉄改革関連8法が成立したのを受け,今後は承継法人にふさわしい人選をすることが最大の任務となるとした上で,「国鉄改革に協力してきた労働組合の組合員は,出向、広域異動,教育等の改革のための諸施策に協力し,努力と犠牲を払っており,このことは個人個人の成績として蓄積されているため,承継法人に移る人は,そういう人の中から多く生まれる可能性があり,かなり得をしたといえるが,国鉄の再建を妨害した労働組合に所属している者は,一日も早く,自らの意識改革を行い,先に行っている人に追いついてほしい」旨の葛西職員局次長の発言が掲載された。
イ 国鉄本社車両局機械課長岡田圭司(以下「岡田課長」という。)は,昭和61年5月,各機関区所長にあてて,当局側の考え方を理解して行動し,新事業体と運命共同体的意識を持つことができ,まじめに働く意志のある職員を日常の生産活動を通じて作ることが必要であり,このような職員のみが新事業体に明るい未来を約束すること,イデオロギーの強い職員や話をしても最初から理解しようとしない職員,意識転換に望みを託し得ない職員等は,あきらめて結構であり,良い職員をますます良くすること,中間帯で迷っている職員をこちら側に引きずり込むこと,良い子,悪い子に職場を二分化することが大切であるなどと記載された書簡を送った。(甲71,72)
ウ 昭和61年8月,新旭川駅所属の職員(国労組合員)が,人活センターに配置されたところ,その後,同職員が所属していた国労を脱退したことなどの事情を受けて,新旭川駅長は国鉄旭川管理局運輸 部総務課長にあてて,同職員の人活センター配属を解除するよう求める「選別上申書」なる文書を発した。また,同年10月には,同じく新旭川駅長は旭川管理局人事課長宛に,同駅営業係兼構内指導係の職員が国労を脱退したことなどの事情を指摘して,同職員を推薦する旨の文書を発した。そして,上記各職員はいずれも,希望する官公庁や,JR北海道での就職を果たした。
(甲54の1,2,105)
(4)総合評価
ア そこで,本件選定過程の差別的取扱いの有無を判断すると,本件選定過程において,原告等を含めた全動労組合員が,日常の職務活動の評価が全く考慮されずに,単に,全動労に所属していることの一事をもって採用候補者に選定されなかったとまではいえないものの,このような個々の国鉄職員の勤務評価とは別に(ないしは併せて),職員の所属する労働組合と国鉄との関係が本件選定過程に影響を及ぼしている可能性があることは否定し難い。すなわち,国鉄の分割・民営化に協調的な動労などの労働組合の組合員については,そのことが有利に,他方で,国鉄の分割・民営化に反対する全動労などの労働組合の組合員については,そのことが不利益に作用しているとみるのが相当であり,葛西職員局次長の「国鉄改革に協力してきた労働組合の組合員は,出向,広域異動,教育等の改革のための諸施策に協力し,努力と犠牲を払っており,このことは個人個人の成績として蓄積されていくため,承継法人に移る人は,そういう人の中から多く生まれる可能性があり,かなり得をしたといえる」旨の発言(前記1,(4),ア)はこのことを如実に示すものと評される。
イ ところで,公共企業体である国鉄も不当労働行為をなすことが禁止され(労組法7条,公共企業体等労働関係法25条の3第1項,25条の5第1項),それゆえ,国鉄も国鉄内部で併存する各労働組合をそれぞれ独自の交渉相手として尊重し,団体交渉やその他の労使関係の局面において,各組合をその性格や運動方針の違いにより合理的理由なく差別したり,特定の労働組合の弱体化を図ってはならないのであるから(最高裁昭和60年4月23日第三小法廷判決・民集39巻3号730号参照),このような労働組合の所属関係を採用候補者の選定判断に反映させることは,国鉄が負う上記のような中立保持義務に反するものといわざるを得ない。
被告は,民営化後の承継法人の職員としては,いわゆる「親方日の丸」的思考を脱却し,積極的に増収活動に取り組むほか,企業人教育に参加するなどした国鉄職員が,承継法人の施策によく協力し,積極的に業務に取り組むことが期待できる者として優位的な評価を受けることは,合理的かつ妥当な取扱いであって,組合差別などというものとは次元を異にするものであると主張する。確かに,国策として進められた国鉄の分割・民営化の過程で,国鉄職員の勤務態度が社会的な批判の対象となったこと(前記1,(1),イ)に照らすと,国鉄の分割・民営化に協力的な姿勢を示していた職員が,その民営化後の承継法人にとって「ふさわしい」と評価されることも一概に理由がないものとはいえない。また,国鉄としては,国鉄改革の諸種の施策に協力姿勢を示した鉄道労連系の 労働組合の立場を慮るならば,鉄道労連系の労働組合と全動労とを同列に扱うことは,他面で国鉄と鉄道労連との信義を損ない,そのような事態は,向後の国鉄改革の実施にとって重大な支障となりかねなかったであろうことも推察するに難くない。
しかしながら,そもそも,国鉄が動労などの鉄道労連系の労働組合と全動労などの国鉄改革に対する反対姿勢を貫く労働組合とで,その運動方針の相違を理由として別異に取り扱うことを許容することは,労働組合の運動方針を理由とする弱体化行為を許容することにほかならないが,国鉄改革関連8法は,何ら,国鉄が各労働組合に対して負う中立保持義務を軽減,免除するものではなく,このことは,国鉄改革関連8法の立法審議の過程でも,承継法人への採用に当たり,組合差別の懸念が呈されたのに対し,政府関係者はそのようなことがあってはならないと答弁し(前記1,(3),イ),また,参議院特別委員会が国鉄改革関連8法を決議した際,「各旅客鉄道株式会社等における職員の採用基準及び選定方法については・・・,所属労働組合等による差別等が行われることのないよう特段の留意をする」よう求めた附帯決議(前提となる事実(2),ウ)をしたことからも明らかである。
してみれば,被告主張のような諸点を理由として,個々の職員の勤務成績を論ずることなく,労働組合の所属関係から,直ちに前述したような国鉄の措置を正当化するのは困難といわざるを得ない。
ウ 以上によれば,本件選定過程では,上記アのような意味で,労働組合の所属関係いかんにより差別的な取扱いがされたと推認するのが相当である。また,そうであれば,本件不選定もまた,上記のような本件選定過程を経てされたものである以上,かかる差別的な取扱いの一環としてされたものと推断するほかない。
*下線は編集部