週刊金曜日 (2008.5.23発行NO.703号)
― 国鉄闘争座談会(5/8) に関する資料 ―
各位 週刊金曜日(2008.5.23発行NO.703号)には、国鉄闘争最終局面へ座談会“大詰めを迎えた21年の闘争”が掲載されています。本誌と合わせて、編集部から提起されたテーマに基づき事前に準備した発言要旨を、参考資料として同封させていただきます。国鉄闘争の勝利解決に向けて、いっそうのご支援ご協力を心からお願い申し上げます(2008年5月23日 坂田晋作)。
○座談会への出席者は次の4人です。
加藤晋介(鉄建公団訴訟弁護団主任弁護士)、二瓶久勝(国鉄闘争に勝利する共闘会議議長)、高橋伸二(国鉄労働組合中央執行委員長)、坂田晋作(建交労全国鉄道本部国鉄闘争推進委員会委員長)
○座談会のテーマは次の 4つです。
1.4者4団体で「雇用・年金・解決金」の「解決3点セット」による勝利解決を目指していますが、21
年間闘い続けてきた当事者と家族の切実な思いが込められていると思います。あらためてこの
「解決3点セット」の説明を。
2.「国家的不当労働行為」との認識が21年を経過した今日、どのような歴史的な意味
合いを持つのか。また、そのことがきちんと社会的に認識されてきたのかどうか。合わせて、今
日の「格差・貧困社会」の中でとくに若者たちとの連帯が解決に向けての一つのカギと思われま
すが、いかがでしょうか。
3.法廷闘争の評価を。何が明らかになり、何が問題として残されているのか。合わせて6月2日
の「葛西敬之証人尋問」の意義をどのようにお考えか。
4.国鉄闘争の解決は「民営化」がこの国に何をもたらしたのかを問うことになり、この国の将来の
あり方を問うことにもなります。最終局面に向けて、法廷闘争と政治的解決の連動による勝利的
解決へ向けての道筋をどのように描いているのかお聞かせください。
事前に準備した発言要旨(坂田)
問1.
4者4団体で「雇用・年金・解決金」の「解決3点セット」による勝利解決を目指しています
が、21年間闘い続けてきた当事者と家族の切実な思いが込められていると思います。あらた
めてこの「解決3点セット」の説明を。まずは所属されている団体をご説明ください。
※文中のゴシック体の語句(坂田 ○○)は、本誌に掲載された発言内容です。
坂田 建交労は1999年に当時の全動労、建設一般、運輸一般の3単産が合同して立ち上
げた労働組合です。いろいろな分野での闘いに対応する13の業種を包括しています。
建交労は国鉄闘争とトンネルじん肺闘争を2大闘争として位置づけていますが、国鉄闘
争は「国家的不当労働行為」とのたたかいです。それだけに当事者と当該団体がまとま
らないかぎり道は開けません。「4者4四団体」(注1)となったことは永年の念願でした
し、とてもよかったと思っています。
坂田 「当事者の要求と意思に基づく解決」は4者の確認です。4団体はこの「3点セット」を
全面的に支え実現をめざしています。奪われた過去については損害の補償を、これから
の人生については雇用と生活の保障をせよという要求です。解決金だけではない。ILO
勧告がいう「公正な補償」もこの雇用・年金・解決金の「3点セット」と同じ意味です。
@これまでの補償・これからの保障
◎当事者・家族の21年間の思いを踏まえたとき、労働と生活のこれまでの補償・これからの保障
が要求の柱となる、それが「雇用・年金・解決金」の3点セットです。なぜかといえば、奪われた過
去を取り戻さないかぎり、これからの人生設計が成り立たないからです。
◎解雇にたいする要求は雇用と年金の確保が柱です。雇用には当事者の労働債権であるバック
ペイと退職金が含まれます。年金は退職後の生活を支える、いわば生涯賃金の要をなすもので
すから、雇用と年金は切り離すことはできません。解決金は不法行為によって生じた精神的苦痛
にたいする損害賠償ですから雇用・年金とは別です。
AILO勧告の「公正な補償」は3点セットと同じ
◎ILO勧告の「公正な補償」は、ILO第98号条約が根拠になっています。それは反組合的な差別
行為にたいする保護の原則ですが、「採用時及び雇用終了時を含む雇用期間中のあらゆる時に
おいて、反組合的な差別行為にたいする保護を保障しているという原則」です。ですから、ILO勧
告がいう「公正な補償」は解決金だけではない3点セットそのものです。
◎なお、3点セットには、ILO勧告の「当事者に満足のいく解決」=「当事者の要求と意思に基づく
解決」。いいかえれば、誰にも白紙委任はしない。「4党合意」の二の舞はしないという意味が込
められています。
問2.「国家的不当労働行為」との認識が21年を経過した今日、どのような歴史的な意味合いを
持つのか。また、そのことがきちんと社会的に認識されてきたのかどうか。合わせて、今日の
「格差・貧困社会」の中でとくに若者たちとの連帯が解決に向けての一つのカギと思われます
が、いかがでしょうか。
坂田 大きく捉えれば21世紀に入って、かつてなく「国家の犯罪」が正面から追及される時
代状況になってきています。トンネルじん肺、薬害肝炎、大気汚染……。その一翼を国
鉄闘争も担っている。官民一体、国民共同で運動に取り組む条件が広がってきているの
がいまだということです。労働者派遣法を労働者保護法にせよという運動も、後期高齢
者医療制度の問題も、連合や全労連の垣根を越えて進んでいますし、全野党も共同し
ようとしている。
@「国家の犯罪」を正面から追及するという時代状況
◎21世紀に入っての注目すべき変化は、「国家の犯罪」を正面から追及するという時代状況にな
ってきたことではないでしょうか。少なくとも国鉄闘争は、その一翼を担ってきたといえます。JR
採用差別事件は憲法・国際条約遵守義務に反する「国家の犯罪」です。国鉄改革法の建前、立
法趣旨からは採用差別による解雇などありえないのです。そのありえないことが、政府によって
引き起こされたのです。
このことは、憲法第28条(団結権・団体交渉権) 、第27条(勤労の権利義務)、第25条(生存権・
社会保障的義務)、ILO第98号条約(団結権及び団体交渉権)、第87号条約(結社の自由及び団
結権保護)に反する、あってはならない重大な犯罪だということです。「国家的不当労働行為」は
「国家の犯罪」だと、大義の旗を高く掲げ勝利への道を開く、ここに歴史的な意味合いがあると
思います。
◎4月17日名古屋高裁は、自衛隊のイラク派兵は憲法違反だと断罪し、憲法の平和的生存権は
国民にたいして具体的に保障すべき権利と認定しました。画期的な判決です。トンネルじん肺、
アスベスト、大気汚染、薬害C型肝炎、原爆症認定問題などでの国の不作為行為の追及、立法
措置の追求でも大きな成果をあげています。ここでも、国のあり方、政治のあり方そのものが問
われています。
A世論は政府の決断による解決へ
◎政府は国鉄改革について、「国民の財産を国の意思により分割民営化する政
治的決断である」といってきました。大事な問題は、その際、政府は国鉄職員・国民に何を公約
し、それがどうなったかということです。
政府は、国鉄から承継された路線はすべて維持する。誰一人も路頭に迷わせない。労働組合
の所属による差別はしないと公約しましたが、これらはすべて反古にされました。
◎この間、組合間差別による不採用問題は最高裁判決(03年12月)以降、東京地裁における鉄建
公団訴訟判決(05年9月)、全動労訴訟判決(08年1月)によって不当労働行為として認定されまし
た。国鉄分割民営化は立法により行われた政治的決断であり、その過程で引き起こされた1047
名採用差別が不当労働行為として断罪されたのです。
政府の政治的決断の中で引き起こされた採用差別事件である以上、政府の責任で解決せよと
求めるのは、しごく当然のことです。裁判闘争と大衆運動によって切り開いてきた到達点であり、
それが世論として、社会的認識として広がってきていると考えています。
B労働者の権利意識と「貧困と格差」
◎闘争がうまくいかないとき、労働者の権利意識が問題にされてきましたが、ここ数年、様相が変
わってきたなと思います。「要求と意識と行動」が一体化してきたこと、国や企業の不祥事・不法
行為にたいして「社会的責任・法令順守を正面に告発・改善」をさせるという闘争の流れがつくら
れてきました。その根底に「貧困と格差社会」のもとでの矛盾と要求があるのではないでしょう
か。
◎日本環境アクセスというJRの子会社がありますが、そこの労働者が新宿駅の組合員に相談に
来ました。雇い止めで解雇を通告されたがどうしたらいいか、組合加入・団体交渉・解雇撤回―
その後、組合への加入が相次ぎ、いまでは30名近くになり分会として活動しています。要求書を
見ると要求の根拠として該当する労基法の条文と最高裁の判例を引用しており、団結すること、
要求することなど権利への目覚めだなと、受け止めました。
JR東海の労働者に、佐藤貴美子さんが92年に出された「父さんのシルクロード」という本を渡
し読んでもらったら、こんなにひどいことがやられていたのか、今の職場の重苦しい雰囲気もそこ
から来ているのかと感想を述べていたそうです。
◎国鉄闘争についても労働者の世代交代という問題があります。これまでともにたたかってくれた
労働者、支援者が団塊の世代で退職するとか、20代から30代の若者は国鉄闘争そのものを知
らないという状況があります。それを克服するための原告団・争議団の工夫と努力が続けられて
います。北海道での団結集会の構成劇や1.23全動労勝利判決のDVDを普及するなど、若い人
に国鉄闘争を丸ごと理解してもらうためです。
◎「蟹工船は現代だ」―
5月2日付読売夕刊に掲載されていました。小林多喜二の蟹工船が例年
の5倍の勢いで売れている、古典としては異例だ。自らの立場を重ね合わせると、貧困と格差へ
の共感が生まれているのではという内容でした。
建交労の青年アンケートをみても、生活苦の下で賃金要求が切実になっています。衆議院選
挙があればという問いにたいして、投票に行くが88%を超えています。政治意識も大きく変わり始
めています。日本の未来は明るいぞという気持ちになります。
問3.法廷闘争の評価を。何が明らかになり、何が問題として残されているのか。合わせて6月2
日の「葛西敬之証人尋問」の意義をどのようにお考えか。
坂田 これまでの裁判を単純に勝った負けたで評価すると間違います。東京地裁の2つの
判決は不当労働行為を認めた。すると鉄道運輸機構は「不当労働行為を前提とするな
ら話し合いには応じません」といってきた。ところが直近の3月13日の判決では不当労
働行為には触れなかった。そこで、逆に不当労働行為があったかなかったかは出口の
問題として扱えば、話し合いのための共通の土俵ができたと言えるのではないか。政
府・鉄道運輸機構は解決には法的・政治的根拠が必要だと、司法判断は解決のための
法的根拠になります。
そういう意味で裁判闘争なくして政治解決なしといえます。しかも、3月27日には院内
集会で民主党の鳩山由紀夫幹事長が積極的に政治解決に向けて努力する旨の発言を
し、共産党や社民党、国民新党も同じ姿勢です。こうして民主党を中心に野党が政治解
決という線で固まってきた。一致して与党に要求していける状況になってきた。
坂田 今年1月の全動労訴訟の東京地裁判決では、分割民営化当時の葛西国鉄職員局次長の
発言が、国鉄の中立保持義務違反を「如実に示すもの」とし、組合員が有する「公平な取扱を
受けるべき法的利益を違法に侵害するものとして、民法上の不法行為にあたる」と判断してい
ます。その根拠として、1986年に動労東京地方本部が葛西氏を招いて会議を開いたときに、
彼が「不当労働行為をやれば法律で禁止されていますので、私は不当労働行為をやらないと
いうことで、つまり、やらないということは、うまくやるということでありまして……」などと述べた
ことや、同年の『公企労レポート』で「国鉄改革に協力してきた労働組合の組合員は、出向、広
域異動、教育等の改革のための諸施策に協力し、努力と犠牲を払っており、このことは個人個
人の成績として蓄積されているため、承継法人(JR)に移る人は、そういう人の中から多く生ま
れる可能性があり、かなり得をしたといえるが」云々と言ったことを挙げています。まさに「語る
に落ちる」とはこのことですが、6月2日の尋問では事実を前に「問うに落ちる」という状況にな
るだろうと思っています。
@裁判闘争なくして政治解決なし
◎東京地裁における3つの判決を、勝った負けたで単純にみると評価を誤ることになります。4者4
団体の基本方針である政治解決という側面と、当事者の要求と意思に基づく解決という側面か
らの評価と対応が重要です。いずれにしても、裁判闘争なくして政治解決なし、この基本を踏み
外さないことです。
◎政治解決という側面からは、不当労働行為の有無を交渉の前提にしないこと。それは、解決時
の扱いとすることによって、話し合う共通の土俵ができたと言えるのではないでしょうか。これま
で政府・鉄道運輸機構は、解決するには法的・政治的根拠が必要だといってきました。鉄道運輸
機構は4者4団体の申入れ(4月17日)にたいして、司法の判断は尊重すると言明しました。高裁
での和解勧奨をも視野に入れた対応の問題として、重視しなければなりません。
当事者の要求という側面からは、不当労働行為と原状回復の問題があります。最高裁判決、
東京地裁判決を踏まえたとき、3点セットの要求は政治が解決しなければならない問題となりま
す。
A全動労判決で何が明らかになったか
<中立保持義務違反>
◎「各組合をその性格や運動方針の違いにより合理的理由なく差別したり、特定の労働組合の弱
体化を図ってはならないのであるから、このような労働組合の所属関係を採用候補者の選定判
断に反映させることは、国鉄が負う…中立保持義務に反するといわざるを得ない」
◎「職員の所属する労働組合と国鉄との関係が本件選定過程に影響を及ぼしている可能性があ
ることは否定し難い。葛西職員局次長の発言はこのことを如実に示すものと評される」
*葛西職員局次長の発言を書証として提出
・動労東京地方本部の会議(86年5月21日)での発言―「不当労働行為をやれば法律
で禁止されていますので、私は不当労働行為をやらないということで、つまり、やら
ないということは、うまくやるということでありまして」
・公企労レポート(86年11月30日)に掲載された発言―「国鉄改革に協力してきた労
働組合の組合員は、出向、広域異動、教育等の改革のための諸施策に協力し、努
力と犠牲を払っており、このことは個人個人の成績として蓄積されているため、承
継法人に移る人は、そういう人の中から多く生まれる可能性があり、かなり得をした
といえる」
*政府答弁、附帯決議も判決に
・「国鉄改革関連8法は、何ら、国鉄が各労働組合に対して負う中立保持義務を軽
減、免除するものではなく、このことは、国鉄改革関連8法の立法審議の過程でも、
承継法人への採用に当たり、組合差別の懸念が呈されたのに対し、政府関係者は
そのようなことがあってはならないと答弁」
・「参議院特別委員会が国鉄改革関連8法を決議した際、…所属労働組合等による
差別等が行なわれることのないよう特段の留意をするよう求めた附帯決議をしたこ
とからも明らかである」
<法的利益、不法行為の認定>
◎「採用候補者の選定の場面において、合理的な理由もなく、他の労働者と異なった劣位的取扱
いを受けるべき理由はないのであるから、本件選定過程において公平な取り扱いを受けるべき
法的利益を有するというべきである」
◎「本件不選定は、原告等が有する法益を違法に侵害するものとして、民法上の不法行為にあた
る」
<損害額について>
◎「公平な選考により承継会社への就職を果たす機会を奪われたものであって、これにより多大
の精神的打撃を被ったものと推察され、…損害を金銭に見積もると、原告等につき、それぞれ
500万円を下るものではないと認められる。…訴訟代理人弁護士に…上記慰謝料額の1割に相
当する50万円をもって相当と認める」―各原告につき550万円、年5分の遅延損害金の支払い。
◎「原告らが本件不選定による損害として主張する賃金、退職金、各種年金の差額については、
…本件不選定による損害とみることはできない」「国鉄職員は、承継法人によって採用されるこ
とそれ自体につき、何らかの権利や直接の法的利益を有していたということはできない」―JR不
採用による損害賠償は認めないという、国鉄改革法23条の枠内での政治的判決であり、最大の
問題です。
B葛西証人尋問(6月2日)のもつ意義を考える
<「問うに落ちる」という法廷に>
◎「問うに落ちず語るに落ちる」という言葉がありますが、6月2日の葛西証人尋問では「語るに落
ちる」だけではなく、「問うに落ちる」ことになるでしょう。
全動労判決では、不当労働行為の認定にあたって、過去の葛西氏自らの発言が取り上げられま
した。まさに「語るに落ちる」とはこのことです。国鉄の最高責任者の一人である職員局次長が、
国労、全動労と対立する労働組合の会議で、公然と不当労働行為をうまくやると発言しているこ
とは、国鉄が組織的に不当労働行為意思を有していたことを端的に示すものでした。このもつ意
味は大きいと思います。
◎6月2日の葛西証人尋問では、国鉄改革の本当の理由が自らの言動に基づき質されるわけです
から、事実を否定することはできない、今度は「問うに落ちる」ということになるでしょう。篤姫の
セリフを借りれば、「嘘をつけば打ち筋が乱れます」よと。裁判闘争においても、政治解決に向け
ても強い影響をおよぼす法廷となると思います。
<国鉄改革は偽装改革であった>
◎国鉄改革は偽装改革であったことも、葛西氏の著書などを通じてうきぼりにされるだろうと期待
しています。
*「未完の国鉄改革」での葛西氏の主張は、企業性と公共性は「2つの異なった命
題」である。分割民営化は、市場原理の徹底をめざしたことは確かである。市場の
合理性=企業性の徹底と、公共の利益に配慮した国民的コンセンサスの形成という
「2つの異なった命題」の接点を求める作業であった。―その作業と実態が質され
ることになります。
*「国鉄改革の真実」での葛西氏の主張は、政治は「妥協」であり経営は「徹底」
である。「両者は対極的な性格」を持っている。「国鉄を分割民営化するには多
数の法律を成立させなければならず、そのためには、立案に際して国会審議を
意識したさまざまな妥協を織り込まざるを得なかった」。北海道や九州において
も赤字ローカル線の廃止は行なわないとされていた。 国鉄分割民営化により誰
一人路頭に迷わせることはしないという政府の公約も。―建前と本音が質され
ることになります。
◎JR東日本が、JR山手線の全駅に転落防止の可動柵を設置することを決めたそうですが、遅き
に失したとはいえよいことです。この問題については、10年程前に当時の全動労東京地本がJR
東日本に申し入れているのです。その時の対応は、「乗客の流れを阻害するようなことはしな
い」と、胸を張って言ってのけたそうです。改革の名に値するような施策は大いに求めて行きた
いと思います。
問4.国鉄闘争の解決は「民営化」がこの国に何をもたらしたのかを問うことになり、この国の将
来のあり方を問うことにもなります。最終局面に向けて、法廷闘争と政治的解決の連動による
勝利的解決へ向けての道筋をどのように描いているのかお聞かせください。
坂田 一審判決が出ている以上、高裁での和解勧奨を含めて裁判の動向がカギになるで
しょう。同時に4者4団体が政府に隙を見せないことが重要です。それは白紙委任、4党
合意的な解決はしないということです。1月9日に日本政府はILOに対して「追加情報」
を出しています。「政府は当事者ではないが」という書き出しです。国労等と鉄道運輸機
構は係争中なので政府が新たな措置を講ずることは困難だ。そして政治解決を拒否し
たのは建交労と国労の一部組合員だと、破綻した4党合意を蒸し返しています。この
間、裁判闘争と大衆運動で切り拓いてきた闘争の到達点は、政府・鉄道運輸機構との
政治的合意と裁判上の和解=同時決着以外、解決への道はないということです。
坂田 「自分たちは当事者ではない」という政府の物言いを逆手にとった対応も必要です。政府が
そう言うのなら、鉄道運輸機構に「あなたたちが当事者として判断しなさい」とぶつけ、国交省
には「私たちはこのように判断しました」と事後報告すればいい、誰が解決責任をとるのかとい
うことです。
@「増税なき財政再建」という国策の根幹が崩壊
◎国鉄闘争のことの始まりは、第二臨調にあるといわれてきました。「第二臨調は、高度成長期に
肥大した行政組織の改革と膨大な財政赤字の再建という緊急かつ国家的な課題に対して、基
本的な改革案を検討するために設置された」。ここに国鉄の経営改革も含まれていました。そこ
でまずみておきたいのは、「増税なき財政再建」という国家目標がどうなったかということです。
◎消費税に象徴される庶民増税、大企業減税と国民犠牲の歳出削減による矛盾の噴出。世界一
の借金大国。矛盾が矛盾を呼ぶ悪循環、貧困と格差の根底にある大問題です。税のとり方・使
い方という国政の根本が問われる時代状況になってきました。「増税なき財政再建」という国策
の根幹が完全に崩壊したからです。
A民活・民営化、「構造改革」路線の破たん
◎鳴り物入りで喧伝されてきた民活・民営化、規制緩和、「構造改革」路線はどうなったでしょう
か。利益第一主義に立つ企業性・効率性と利用者の利便、安全など公共性とは相容れないこと
が明らかになりました。国鉄分割民営化の実態をみれば明らかです。企業性という点でも、三島
会社・貨物は株式の上場すらできない状態です。
◎「増税なき財政再建」の旗印のもと、株式会社による建設・運営を選択(83年11月)し、中曽根民
活第一号ともてはやされた関西空港は、巨額の借金に苦しみ続けている(4月26日付・朝日)。
中曽根元首相の証言も出ていました。中曽根氏は「電電・専売・国鉄3公社民営化の先駆けとし
て株式会社でやったことが、その後の数々の民営化の成功に結びついた」というが、関西空港
は、94年9月の開港から8年赤字続きだった。03年から毎年90億円の補助金を30年間つぎ込
む。04年から黒字。これは、JR三島会社への経営安定基金と同じではないですか。
「関空も苦労しただろう。だが、そこは努力で克服しなければならない」といいながら、「国内外で
新たな空港ができるし、景気の波もある。だから国から相当バックアップしていかなければなら
ない」。これで何が株式会社といえるのか。村山敦関空会社社長の証言も出ていましたが、言う
ことはまだ中曽根氏よりはましです。「補助金をもらわなければやっていけない会社は、株式会
社とは言えませんわ」。投げやりな態度ですが。
◎09年3月開業の静岡空港は100%搭乗でも赤字。主要施設建設費の半分245億円は国の空港
整備特別会計からの補助。長崎新幹線の着工もしかり、国(1733億円)と長崎県(297億円)、佐賀
県(180億円)も巨額の負担。費用対効果に疑問の声が出ていますが―博多・長崎間が現行より
26分、博多・佐賀間が5分の時短効果です。総工費2600億円、馬鹿な話です。
◎労働・社会保障・医療・教育など国民生活のあらゆる分野に、グローバル化、財政危機を理由
に民営化、規制緩和、「構造改革」路線、競争原理が導入される中で、「貧困と格差」が深刻化し
ているのが実態です。
B政府の意図を見抜く―4党合意の復活
◎政府はいったい何を考えているのか、ILOへの政府追加情報(1月9日付)をみてあきれ返りまし
た。政府は当事者ではないが本案件の経緯と、動き等について追加情報を提供する。現在、国
労等と鉄道・運輸機構との間で係争中の事案であるため、政府として新たな措置を講ずること
は極めて困難。わざわざ破綻した4党合意を持ち出し、「政府は政治解決として、4党合意の枠
組みの中で100回以上の会合を持つなど必要な対応をとってきた。ILO結社の自由委員会も受
け入れを強く要請」してきた。にもかかわらず、それを拒否したのは、建交労と国労の一部組合
員だ。これが3月のILO報告に影響をおよぼしたことは間違いありません(委員会は、国労と鉄道
運輸機構との異なる見解を念頭におくと、すでに20年におよぶ諸懸案について話し合いによって
早急な解決案を見出すことは現状では明らかに難しいと考える。―第7次勧告では、特に労使
関係の分野では司法だけによる解決がそぐわない問題があるとし、政治解決を促していた)。政
府の意図は、4党合意に代わる政治的枠組みであり、それは「4党合意」路線の復活です。
◎政府は国鉄分割民営化の実行者であり、附帯決議、政府答弁の履行義務を負っていることか
らも責任を回避することはできないし、「4党合意」破綻後の最高裁判決、東京地裁判決などの
司法判断をも無視するような、無責任な態度を容認することはできません。
◎そこで大事な問題は、4党合意の二の舞いはしないという4者4団体の確認とその徹底です。こ
こを踏み外すと解決局面はつくれません。その中心問題は何か、次ぎの3点です。
1つは、解決交渉の入り口から出口まで4者4団体は統一して対応(裁判を含めて)することです。
2つは、当事者の要求と意思による解決、白紙委任はしないということです。
3つは、政治解決か裁判かではない、政府・鉄道運輸機構との政治的合意(基本的合意)と裁判
上の和解=同時決着です。政治解決こそ本筋、一審判決(不当労働行為の認定、慰謝料の支払
いなど)の取り扱いは原告と被告の関係となるので、裁判上の和解なくしてできないこと。
C現局面で留意すべき問題は何か
◎政府の対応をにらみながら、解決当事者としての鉄道運輸機構の責任を法廷内外で追及して
いくことです。鉄道運輸機構とは原告・被告という直接の関係があります。以下の2点は、鉄道運
輸機構への申入れ(4月17日)内容です。
1.鉄道運輸機構は、1047名当事者の要求である「雇用・年金・解決金」を基に早期解決を図る
ため、交渉テーブルの設置など解決への態度を明確にすること。その上に立って、国土交通省
に対して解決への適切な措置を講ずるよう働きかけること。
2.鉄道運輸機構は、東京高裁・東京地裁等で係争中の事件についての同時決着(「政治的合
意と裁判上の和解」)に向けて、必要な条件整備を図るため、ただちに当事者間の協議を始め
ること。
申入れにたいする鉄道運輸機構の回答です。本件に関して、「施策は適切に行っており問題
があるという認識ではない。裁判においてもそう主張している。しかし、裁判上の被告であり当
事者としての立場から、問題があれば解決しなければならないと思っている。いまの時点で、
仮定や予断をもって和解の判断が求められると難しいが、仮に裁判所から和解という判断が
あれば真剣に検討しなければならない。司法の判断は尊重する。政治の動きは仄聞している
だけである。もしあればそのなかで判断する」
◎4者4団体と支援団体(者)との関係です。4者4団体は解決当事者としての統一体制(まとまらな
ければ解決しない)であって、大衆行動などを含めて、すべてを取り仕切る組織ではありません。
この点については、情勢分析、闘争方針、行動・交渉配置などについて支援団体(者)との意見
交換が必要です。
以上